百怪風景

妖怪・怪談の紹介と考察を行うブログです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

滑瓢

(鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「ぬらりひょん」) ぬらりひょん(滑瓢)と言えば、ゲゲゲの鬼太郎などにも登場する非常に有名な妖怪です。筆者は未読なのですが、『ぬらりひょんの孫』という漫画作品も流行していたので、御存知の方も多い妖怪なのではない…

籠女籠女

久々の更新になります。今回は、昔に一度、別のサイト(現在はもうやっておりません)で書いた記事の再録になります。 これはAさんという50代女性から聞いた体験談です。エピソード自体は非常に短く、すぐに終わります。まずはこちらをご覧ください。-------…

倩兮女

(鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』) 「倩兮女」 楚の国宋玉が東隣に美女あり。墻にのぼりて宋玉をうかがふ。嫣然として一たび笑へば、陽城の人を惑わせしとぞ。およそ美色の人情をとらかす事、古今にためし多し。けれけら女も朱唇をひるがへして、多くの人をまどわ…

市松人形

そろそろ九月も中盤に差し掛かり、少しずつ過ごしやすい気候になってきました。よって、実話怪談シリーズもここで一区切りとさせていただきます(しばらくは妖怪の紹介と考察に戻る予定です)。今回はとりあえず最後、ということで筆者の体験談を掲載したい…

彼岸の恋人

8月もいよいよ最終盤に差し掛かって参りましたが、未だに猛暑は衰えを知りません。暑さの続く限りは怪談記事を投稿していきます。これは筆者の知人である山本さん(仮)という男性から聞いた話です。 山本さんは、大して売れていないバンドのギタリストだっ…

ラブホテル

連日非常に暑い日が続いております。ということで、今回は夏の怪談企画第二弾です。このお話は、3年ほど前にタクシーに乗った時、その運転手さんにお聞きしたお話です。名前は伺っておりませんので、仮に山田さん、としておきます。 山田さんはタクシーの運…

ウォーリーを探さないで

さて、夏も本番になりました。当ブログでは、普段は主に古典的な妖怪の考察と紹介を行っているのですが、今回は夏ということで、筆者が直接収集した怪談をご紹介していきたいと思います。 みなさんは「ウォーリーを探さないで」という恐怖フラッシュを御存知…

塗佛

(鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「塗仏」) 「塗仏」 鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に、目玉を飛び出させた人間が仏壇から出てきたような形で描かれている。石燕は何も解説をしていないため、どのような妖怪かは不明である。 (村上健司編『日本妖怪大事典』)…

砂かけ婆

「スナカケババ」 奈良県では処々でいう。御社の淋しい森の蔭などを通ると砂をばらばらと振掛けて人を嚇す。姿を見た人は無いというのに婆といっている。 (柳田国男『妖怪名彙』) スナカケババといえば、鬼太郎ファミリーの一角にして、日本でも抜群の知名…

狸囃子

「タヌキバヤシ」狸囃子、深夜にどこでとも無く太鼓が聞えて来るもの。東京では番町の七不思議の一つに数えられ(風俗四五八号)、今でもまだこれを聴いて不思議がる者がある。東京のは地神楽の馬鹿ばやしに近く、加賀金沢のは笛が入っているというが、それ…

油すまし

「アブラスマシ」肥後天草島の草隅越という山路ではこういう名前の怪物が出る。ある時孫を連れた一人の婆さまが、ここを通ってこの話を思い出し、ここには昔油瓶下げたのがでたそうだというと、『今も出るぞ』といって油すましが出てきたという話もある。(…

天井嘗

(鳥山石燕『画図百器徒然袋』) 「天井嘗」天井の高は灯くらうして冬さむしと言へども、これ家さくの故にもあらず。まつたく此怪のなすわざにて、ぞつとするなるべしと、夢のうちにおもひぬ。(鳥山石燕『画図百器徒然袋』) 天井嘗(てんじょうなめ)は文…

赤ゑいの魚

(竹原春泉・桃山人『絵本百物語』) 「赤えいの魚」この魚その身の尺三里に余れり。背に砂たまればをとさんと海上にうかべり。其時船人嶋なりと思ひ船を寄れば水底にしづめり。然る時は浪あらくして船是が為に破らる。大海に多し。(竹原春泉・桃山人『絵本…

じゃんじゃん火

あれは私がまだ小学生の頃やったかな。 私、高校を卒業するまでは奈良に住んでたんやけどな。その頃住んでた家のすぐ前には大きいお墓があってね。小さい時はそれがすごい怖かったんよ。 その日はたしかお母さんの買い物についていってたんやけどね。家に着…

子取りぞ

「コトリゾ」出雲地方でいう妖怪。夕方、戸外で遊んでいる子供がいなくなると、子取りぞに奪われたなどという。子取りぞは子供を奪っては脂を搾り、その脂で南京皿を焼くのだという。(村上健司編『日本妖怪大事典』) 妖怪を考える上で、ひとつ非常に重要な…

狂骨

(鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』) 「狂骨」狂骨は井中の白骨なり。世の諺に甚しきことをきやうこつといふも、このうらみのはなはだしきよりいふならん。(鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』) 狂骨もまた、具体的な伝承が存在しない(もしくは現状発見されていない)妖…

不落不落

(鳥山石燕『画図百器徒然袋』) 「不々落々」山田もる提灯の火とは見ゆれども、まことは蘭ぎくにかくれすむ狐火なるべしと、ゆめのうちにおもひぬ。(鳥山石燕『画図百器徒然袋』) 提灯お化けと言えば、一つ目小僧や唐傘お化けと並んで非常にポピュラーな…

文車妖妃

鳥山石燕『画図百器徒然袋』 「文車妖妃」歌に、古への文見し人のたまれやおもへばあかぬ白魚となりけり。かしこき聖のふみに心をとめしさへかくのごとし。まして執着のおもひをこめし千束の玉草には、かかるあやしきかたちをもあらはしぬべしと、夢の中にお…

すねこすり

「スネコスリ」犬の形をして、雨の降る晩に、道行人の足の間をこすって通るという怪物(備中小田)(柳田国男『妖怪名彙』) 一週間ぶりの更新です。自粛期間中にも関わらず、利き手を負傷してしまってキーボードが満足に打てず(今もそれほど打てません)、…

コトリバコ【参】

「コトリバコ」箱の作り方を教えた男は箱の管理の仕方を残し、ハッカイを持って去っていった。その方法とは、女子どもを近づけないこと、必ず暗く湿った場所に安置すること、箱の力は年を経るごとに弱くなっていくこと、もし必要なくなった場合は、寺では絶…

コトリバコ【弐】

「コトリバコ」その方法はまず最初に複雑に合わさった木の箱を作り、その中身を雌の家畜の血で満たして一週間置き、そして血が乾き切らないうちに蓋をする。それから部落で間引いた子どもの体の一部を入れるが、年齢によって入れる部位が異なる。生まれたば…

コトリバコ【壱】

「コトリバコ」島根県のある地域に伝わるという怪異で、木が複雑に組み合わさってできた二〇センチ四方ほどの大きさの木箱という様相をしている。本来は「子取り箱」と書く物体で、その正体は呪い殺すために作られた一種の武器だという。この箱が近くにある…

猫娘(嘗女)

(速水春暁斎『絵本百物語』) 「猫娘」(阿州の奇女)阿波の国にさる豪家の娘、きりやう諸人に勝れしが成因果にや、唯男をねぶるのくせ有りといいはやしけるが、或若者彼が容色にめでて媒人をたのみ彼家に入家し、既に閨房に入りけるが、娘はやがて婿をとら…

ヤマノケ

「ヤマノケ」山形県と宮城県の県境の山道に出現したという怪異。肌は白く、片足と首から上がなくなった人間のような姿をしており、目や鼻など顔のパーツが胸についた奇怪な姿をしている。さらには「テン…ソウ…メツ…」という言葉を発しながら両手をめちゃくち…

一反木綿

「イッタンモメン」一反木綿という名の怪物。そういう形のものが現れてひらひらとして夜間人間を襲うと、大隅高山地方ではいう。(柳田国男『妖怪名彙』) イッタンモメンは水木しげる先生の「ゲゲゲの鬼太郎」にも登場する妖怪です。恐らく現在では河童や天…

邪魅

(鳥山石燕『今昔画図続百鬼』) 「邪魅」邪魅は魑魅の類なり。妖邪の悪気なるべし。(鳥山石燕『今昔画図続百鬼』) 邪魅は鳥山石燕の「今昔画図続百鬼」に描かれた妖怪です。作家の京極夏彦先生が「邪魅の雫」という傑作長編小説を書いておられるので、御…

児啼爺

「コナキジジ」阿波の山分の村々で、山奥にいるという怪。形は爺だというが赤児の啼声をする。あるいは赤児の形に化けて山中で啼いているともいうのはこしらえ話らしい。人が哀れに思って抱上げると俄かに重く放そうとしてもしがみついて離れず、しまいには…

静か餅

「シズカモチ」下野益子辺でいう。夜中にこつこつこつこつと、遠方で餅の粉をはたくような音が人によって聴える。その音が段々と近づくのを搗込まれるといい、遠ざかっていくのを搗出されるといい、静か餅を搗出されると運が衰える。搗込まれた人は、箕を後…

はじめに

言葉というものは多義的であると同時に広大な「意味の広がり」を持っています。たとえば「かわいい」という言葉の持つ意味の広がりは非常に広大で、若い女性のいう「かわいい」の意味が年配の男性には全く理解できない、ということはままあることです。それ…